オーバーライト ブリストルのゴースト/感想/周回遅れの人生録

著者:池田 明季哉 イラスト:みれあ

★★★★★

今回紹介する本は「オーバーライト ブリストルのゴースト

第26回電撃小説大賞「選考委員奨励賞」受賞作。著者は池田 明季哉様。

イギリスのブリストルに留学中の大学生ヨシは、バイト先の店頭で“落書き”を発見する。それは、グラフィティと呼ばれる書き手(ライター)の意図が込められたアートの一種だった。美人だけど常に気怠げ、何故か絵には詳しい先輩のブーディシアと共に落書きの犯人探しに乗り出すが――「……ブー? ずっと探していたのよ」「ララか。だから会いたくなかったんだ!」「えーと、つまりブーさんもライター」ブーディシアも、かつて〈ブリストルのゴースト〉と呼ばれるグラフィティの天才ライターだったのである。グラフィティを競い合った少女ララや仲間たちと、グラフィティの聖地を脅かす巨大な陰謀に立ち向かう挫折と再生を描いた感動の物語!

第26回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》受賞作。

以下、ネタバレを含む感想です。

グラフティ、ストリートアートを題材にした作品を今まで読んだことが無かったので、楽しみだった。結果は大満足。行ったことはないけど伝わってくるイギリスの情景。ライター達の情熱。主人公とヒロインの心の底に燻っている熱。スピード感のある文章に引き付けられて、読了後には胸の中に不思議な清涼さを感じた。なぜこの作品が金賞にならないのか不思議だ。そう思うぐらい完成度の高い作品だった。

 

物語はある事情から、イギリスに留学していた大学生ヨシが、バイト先のガラスに書かれたグラフティ。それを書いた犯人をバイト仲間のブーディシアさん(以下、ブーさん)と一緒に探すことから始まる。

犯人探しの中、やたらグラフティに詳しいブーさん。どうやら彼女は〈ブリストルのゴースト〉と呼ばれる一級のライターだったらしい。

犯人探しという小さな事件を追った先で、市議会VSライターの抗争という大きな事件に巻き込まれる。ライター達をまとめるララと名乗る少女は、ライター達の積み重ねてきた誇りを守るため、革命を起こすと言う。

そしてララはブーさんに、ライター達の旗頭としてグラフティを書いてほしいと望むのだけれど、ブーさんは書かないと言う。

ブーさんに自分に似たものを感じたヨシは、自分がイギリスに留学する事になった理由を話す。彼もまたアーティストであり、挫折し、逃げてきた人間だった。彼はどうすれば彼女の心を救えるか考え、行動に移したのだけれど、彼女は書かない、いや書けなかった。

この先はぜひ作品を読んでみてほしい。2巻も期待して待っている。

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