著者:犬君 雀 イラスト:つくぐ
★★★★☆
今回は「サンタクロースを殺した。そして、キスをした。」という本を紹介します。
第14回小学館ライトノベル大賞「優秀賞」受賞作。著者は犬君 雀様です。
聖夜を間近に控え、街も浮き立つ12月初旬。先輩にフラれた僕は、美しく輝く駅前のイルミネーションを眺め、どうしようもない苛立ちと悲しさに震えていた。クリスマスなんて、なくなってしまえばいいのに……。そんな僕の前に突如現れた、高校生らしい一人の少女。
「出来ますよ、クリスマスをなくすこと」
彼女の持つノートは、『望まない願いのみを叶える』ことが出来るらしい。ノートの力で消すために、クリスマスを好きになる必要がある。だから――
「私と、疑似的な恋人になってください」
第14回小学館ライトノベル大賞、優秀賞受賞作品。これは、僕と少女の奇妙な関係から始まる、恋を終わらせるための物語。
以下、ネタバレを含む感想です。
全く理解のできない内容で恋人だった先輩に振られた僕。「クリスマスなんて、無くなってしまえばいいのに」と呟いた彼に「クリスマスを無くすこと、できます」と声をかけてきた少女。やべー奴には関わらないようにしようと考えた僕に突き付けられたのは、自身の書いた殺人計画書だった。
弱みを盾に少女は僕のアパートに居座り、疑似的な恋人になる為の3週間が始まる。一緒に過ごす中、2人は互いの傷を理解し、拙いながらも埋めあっていく。その先に待っていたのは、王道ながらも緻密に作りこまれた結末だった。
社会に馴染めなかった2人が出会い、惹かれ、ささやかな幸福を見つける。という私の好きなジャンルの1つだった。三秋 縋様の「いたいのいたいの、とんでゆけ」を思い出した。
あと、作者様のあとがきに衝撃を受けた。創作は現実への冒涜であり、「かつてあった」失ってしまったものを遺すための傷である。深いなぁ。印象的だったあとがきベスト5に入った。