プロペラオペラ/感想/周回遅れの人生録

著者:犬村 小六 イラスト:雫綺 一生

★★★★☆

今回紹介する本は「プロペラオペラ

著者は「とある飛空士シリーズ」の犬村 小六様。

軍艦、空戦、太平洋戦争、犬村小六作品にもさして馴染みのない私だったが、キャラの魅力と、スピード感のある文章で最後まで楽しんで読むことができた。

美少女艦長+天才参謀、天空の艦隊決戦へ!

極東の島国・日之雄。その皇家第一王女イザヤ18歳。彼女はしかし同時に、重雷装飛行駆逐艦「井吹」の艦長である。イザヤのためなら命を投げ出す乗組員達は、全員彼女の大ファン!そんな「井吹」に、突然イザヤの部下として乗り込んできたのは、主人公クロト。皇族傍系黒之家の息子であったクロトはイザヤとは幼なじみであったが、ある日、イザヤに対し最っ低の事件を起こして皇籍剥奪となり、家族もろとも敵国ガメリア合衆国へと逃亡したのであった。そのクロトが(どのつら下げて)なぜ今ここに!?クロトは言い切る、「俺はガメリアを牛耳る怪物から日之雄を守るために帰ってきた」!おりしも我が国日之雄は、カネと武力で日之雄を我が物とせんとするガメリアと開戦に踏み切った。イザヤとクロトは「井吹」を駆り、超大国ガメリアの世界最強飛行艦隊に対し決戦を挑む!!自信満々、超傲慢、頭が切れるのに加えてバカがつく努力家クロトの大驀進人生の絢爛舞台、ファン待望の犬村小六真骨頂「空戦ファンタジー戦記」が堂々開幕!!!

主人公黒之 クロトは幼少のころに、日之雄皇家第一王女白之宮 イザヤに「おれが皇王になるために、おれと結婚しろ」といろいろと最低なプロポーズを行い、国を追われていた。

クロトの行きついた先は人種差別の横行する軍事大国ガメリア合衆国。父親が失踪し無一文になった彼は、相場師のカイル・マクヴィルとの出会いを機に成り上がり、五千万ドルもの資産と相場師としての名声を手に入れる。しかし、彼はその生き方には疲れてしまったらしい。

そして転機は訪れる。イザヤと再会し、彼女の迎える末路を知ったこと。カイルに裏切られ、身ぐるみ剥がされたこと。そして、カイルがイザヤに向ける異常な執着を知ったことだ。

そうしてクロトは日之雄に戻り、軍に入り成果を挙げ、イザヤと同じ艦、駆逐艦「井吹」に乗艦することになる。物語の導入はこんな感じだが、この時点でそうとうに面白い。なにより、クロトとイザヤの2人がすごく魅力的。カイル気持ち悪い。

 

艦内での意外とコミカルな日常を挟み、ガメリア合衆国との戦闘が始まる。

初戦の結果は敗北だった。ガメリアの先進技術と日之雄の驕りにより、日之雄は大打撃を受け、クロト達の乗る艦「井吹」は敗走する。軍令部はどうして、そう敵の脅威を低く見積もるのかな。私には意固地になって思考停止しているようにしか見えない。

井吹」と後続の艦は生き延びた、逃走はできない。海上輸送路を絶たれれば日之雄は滅びるからだ。「井吹」は生き延びた艦とともに夜襲をかける。だが索敵能力はガメリアが上、砲撃を受けながら駆逐艦が艦隊につっこむ。

ミュウが観測し、クロトが計算し、イザヤが指示を出し、兵員が撃ち、リオが舵を切る。物量と技術力の差をどうにか埋め、勝ちを拾う。

だが戦闘は終わらない「井吹」が壊れていく中、ほとんどの兵員を退艦させ、イザヤの異能で戦場を俯瞰し、クロトが砲の射角を計算する。この時のイザヤの独白が、すごく場違いで、儚げで、甘酸っぱくて。現実が重くて、しんどいからこそ、美しかった。

 

さて、とても満足のできる作品だからこそ、今後の展開が心配だ。国力差は絶望的、他の人のレビューを見る限り不安だ。どうか美しい結末であってほしい。

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