ヴィランズテイル/感想/周回遅れの人生録

著者:綾里 けいし イラスト:リラル

★★★★★

今回は「ヴィランズテイル」という本を紹介します。

綾里 けいし先生の新作「終焉ノ花嫁」が発売される前に再読することに。

 

この作品を読んだ時の衝撃は今でも覚えている。

「将来の夢、食料。それが私です」「言い切っちゃったよ、この子」こいつはやべー奴だ。そう思った。主人公とヒロインとの掛け合い、二転三転する謎、可愛い妹達、作中に漂う狂気。こんなに面白い作品が1巻で打ち切りなんて信じたくない。万人受けはしなくても、需要はあるのだけど。

食糧と書かれた宅配便に入っていたのは『淑女』と名高い同級生、白咲初姫だった。姉を殺し内臓を食べた人物に自分も食べて欲しいという。彼女は『有坂家【モンスターファミリー】』次男である俺、有坂有哉が犯人だと言い、自分を食べろと居座り始めた。折しも俺は兄妹の部屋から誰かの内臓と手首を見つけてしまい……。それでも俺は家族を推定無罪とし、平穏を守るべく、初姫が納得する別の犯人探しに乗り出すが――。青春を生き抜く悪役たち【ヴィランズ】の学園ミステリアス・エンタテイメント!

以下、ネタバレを含む感想です。

 

「モンスターファミリー」と呼ばれる有坂家の4兄妹の次男、有坂有哉の元に「食糧」と書かれた宅配便が送られてきた。中に入っていたのはクラスメイトの白坂初姫だった。

「――――有坂有哉君ですね」「私を、食べて欲しいんです」

姉を食べた犯人に食べられたい初姫に、犯人だと断定された有哉「有坂家」の平穏を守るために「適当な犯人」をでっち上げる必要があるのだが、兄妹3人の部屋から血染めの服、人間の肝臓、人間の手首が見つかる。果たしては家族の平穏を守れるのだろうか。

 

この作品で有哉は度々、悪役の安らぎとは何か。ヴィランズの幸福とは何かと問うている。それはきっと、彼の兄妹達も考えていることだ。「有坂家」は両親の支配を脱した時からずっと外部の人間に怯え、内部の怪物に怯え、ギリギリの人生を強いられてきたのだろう。

そんな生き地獄を歩む中、白咲初姫が現れた。人間社会の中で排斥され、孤立するヴィランズに、貴方がいいですと言ってくれた。それが、どれだけの救いになってくれたのだろうか。

最終的に有哉の中で、初姫は自分の中の「良心」という形で落ちつく訳なのだけれど、彼女にとってはどうなのだろう。エピローグでが語るように「家族」の中の1人になったのだろうか。

タイトルとURLをコピーしました