吸血鬼に天国はない3/感想/周回遅れの人生録

著者:周藤 蓮 イラスト:ニリツ

★★★★★

死神めっちゃいい奴やん。どんなキャラなのか期待していたら、がっつり主人公だった。人間からだいぶ外れた存在なのに、他の誰よりも人間らしく足掻いていた。

足掻いて、打ち砕かれて、子供のように泣いている彼女に、人生の先達としてシーモアが示して見せた「証明」も素晴らしかった。もっとこの作品が好きになる大満足の3巻だった。

「お兄ちゃんも真面目に生きて、天国を目指そうって気になってきたんですか?」個人でやっていた運び屋を、会社として運営し始めて早一月。恋人のルーミー、そして社員として雇い入れたバーズアイ姉妹たちとともに仕事を回す日々。経営は苦しいながらもシーモアは、情報屋のフランから「真面目」とからかわれるような幸せに浸っていた。 だがある日シーモアのもとに捜査官から、ルーミーのもとに殺人株式会社から、脱獄した『死神』の捕獲・討伐に協力するようそれぞれ秘密裡に依頼が入る。だがある日シーモアのもとに捜査官から、ルーミーのもとに殺人株式会社から、脱獄した『死神』の捕獲・討伐に協力するようそれぞれ秘密裡に依頼が入る。一方、『死神』の手による連続殺人事件が巷を騒がせるようになり、街は徐々に無秩序がはびこるようになっていた。はからずも同時期、街には新たなる怪異が産声を上げようとしていて……

以下、ネタバレを含む感想です。

 

それぞれ別口から、『ボーデン家の死神』リジー・ボーデンの捕獲、討伐依頼を請けることになったシーモアルーミー。物語の中盤で、シーモア死神と会って逃げ切ったという男に出会い、些細な違和感を抱き、彼女の本質に一歩踏み込むことになる。

「君は、僕なのか。死神」

死神シーモアと同じく父親を亡くしていた。空っぽの棺桶を見て、確かなものが壊れてしまったのはだけではなかった。そして彼女は生まれ持ち、抑えていた殺意を受け入れ、死神になった。

 

物語は進み、シーモアの前に死神彼女が自身を型にして作った新たな怪異『ボーデン家の死神』が現れた。

死神シーモアに自身の目的を語る。「世界の確かさを取り返す」

「世界の確かさ」それはかつてシーモアが、吸血鬼という災厄に向き合い、足掻き、手に入れた、不確かな人生を歩むための指針だった。

「頑張ってるだろ?褒めてくれないかな」

この一言で、これまで抱いていた彼女の人物像が粉々になった。そこに居たのは死神ではなかった。彼女は迷子の子供だった。

 

死神の真意を知ったシーモア彼女の捕縛依頼を断る。人を食べる怪物と愛を築いているのに、どうして彼女の行いを非難できるのか。3巻読んでいて思ったのだけれど、の甲斐性が上がりすぎだね。カッコいい。あの、見当違いな斜め上の格好つけをしていた頃が懐かしい。

そして、終盤にシーモア死神「縋るに足りうる確かなもの」を証明しのてみせる。この証明がとても素晴らしい。よくこんな表現を思いつくなと感嘆した。

 

シーモア達の先行きに不安は無い。きっと美しい結末に辿りつけるだろう。

タイトルとURLをコピーしました