著者:綾里 けいし イラスト:一色
★★★★★
今回は「魔女の愛し仔」という本を紹介します。著者は綾里 けいし先生。「終焉ノ花嫁」は全く私に合わなかったがが、この作品はすべての要素が刺さってくれた。好みの1冊。
魔女が人間の子供を拾ったって。その先には、ロクな結末が待っていやしないのに―――
魔宴の夜、魔女集会へ生け贄として捧げられたサラは古き魔女、エンゲル・ヘクセンナハトに拾われる。『幸福になれなかった物語』を管理する彼女の書架には、銀の鎖で封印された“呪われた御話”たちが眠っていた。在るべき結末を迎えなかったお伽噺を幸せな終わりに導くためサラは禁忌を破って独断専行、本の中へと飛び込んだ!物語世界を旅する魔女と少女を待ち受けるのは、幸福な結末か、哀切な運命か、それとも――――
以下、ネタバレを含む感想です。
お師様のことが大好きすぎる『魔女の愛し仔』サラと、弟子であり、愛し仔の彼女が大好きすぎる『古き魔女』エンゲル・ヘクセンナハト(以降、エル)。
2人が、『幸福になれなかった物語』の中に入り、物語を歪めた登場人物を探し、バッドエンドをメリーバッドエンド寄りに導いていく解呪ミステリー。
物語を歪めるのは、登場人物たちの強い意志。強い願いと、その結末に触れ、サラとエルは『幸福』とは何なのかを問い直す。
不器用なサラとエル、人として足りない2人の百合、良い。
自分に、何ら価値を見い出だされていないと知りながらも、傍に置いてくれたことに意味を抱いたサラ。
サラを拾いながら、彼女に関心をもっていなかったエル。人と触れ合うことを知らなかった彼女が、サラとの穏やかで幸福な日々を通じて、情を抱き苦悶する。
良い。すごく良い。
―――――物好きなことだ。人間の子供を愛し仔にするなんて。魔女が人間の子供を拾ったって。その先にはロクな結末が待っていやしないのに。
エルがサラを拾った事には理由があった。サラには役割があった。互いを思い合う、深い愛故に、彼女たちは大きな選択をする。2人の先行きは果たして―――